格安SIM市場の問題点と新規ユーザーに知ってほしい事

格安SIM市場の問題点と新規ユーザーに知ってほしい事

 格安スマホ自体は、SIMロックフリースマートフォンの総称とも言える。SIMカードを利用している通信端末であれば、格安SIMを提供しているMVNOが販売しているSIMカードをSIMロックフリースマートフォンのSIMのスロットに差し込むだけで、通信料金を大幅に下げた料金をユーザーは享受することが出来る。
 ここだけ聞くと、アベノミクスで景気が伸びてきているとはいえ、まだまだ、家計は火の車といったような生活者や、少しでも、コストを下げたいと考える企業経営者には、是非、利用してほしいといった気持にもなるが、まだまだ、市場としては小さく、これからとも言える格安SIM、イオンやヨドバシカメラ、ビッグカメラなどの大型の商業施設や、家電量販店、パナソニックなどの大手家電メーカー、BIGLOBE、OCNなどの大手プロバイダ、DMM、楽天といったような、大手のインターネットサービスプロバイダ、全国展開しているCD、DVDのレンタルを行っているツタヤや、ゲオなども参入してきて、MVNO側も有名企業の新規参入が目立っている。
 また、実際利用するスマートフォンと言えば、AppleのiPhoneやiPad、家電メーカーで言えば、シャープ、富士通や、ソニーなど、数多くのSIMロックフリーの格安SIMのサービスを利用できるスマートフォン端末や、タブレット端末、ファブレットなどもリリースして来ており、市場が盛り上がる準備は整ってきているが、まだまだ、実際の携帯端末の市場におけるSIMフリー端末や、SIMカードのセールスはまだまだ全体の10%にも満たない。
 先日、政治の場で、安倍首相の一声で始まった、携帯電話の値下げを議論する場が、総務省主導で有識者を集めて始められ、格安スマホに関しても市場活性化に寄与するのではないか?といったような、議論も論じられた。
 しかしながら、まだまだ、当サイトを運営している側からすれば、それでも、まだまだこれからの市場なのではないか?と思う。更にサービスは変化していくだろう。サービスは変化していかなければならいと考える。これには、大きく3つの弊害が考えられる。


◆安定的な高速通信を提供できるサービスが少ない

 MVNOはそもそも、ドコモやauといった大手通信事業者から通信回線ともいうべきネットワーク網を利用して、通信回線を生活者に提供している。
 この一言を聞くと、ドコモのネットワークやauのネットワークを利用した通信サービスなので、安定的な高速通信を利用することが出来るといったイメージがある。しかしながら、実際利用している人なら気づいているだろうが、高速通信という言葉に疑問を感じるくらいの速度になってしまい、ストレスを感じている人も少なくない。
 これはどういう事かと言えば、MVNO各社は一定の料金を大手通信事業者に支払い、その金額に応じて、通信網を幅を提供される。この幅というのが厄介だ。
 ユーザーが増えれば、増えるほど、その通信網の幅を利用していく、当然だ。しかしながら、ユーザーが増えれば、その幅はどんどん食い尽くされ、余剰の通信網の幅が少なくなっていく、結果どうなるかと言えば、通信網がパンク寸前になり、通信速度が遅くなっていく、他のユーザーの通信が終わるまで、自分がスマホでしたい事は、待ち状態になる。
 これは、MVNO側に問題がある。市場を提供する側が、ユーザーの増加を想定しきれずにいたために、発生した事態だ。ヨドバシカメラのSIM売り場で一番売れているFREETEL(フリーテル)というMVNOは、回線のパンクを恐れ、毎月、回線量を増加していくと言う事をリリースしている。これは、小回りが利く、中小企業だからできることで、大部分が、大手の有名企業がMVNOを実施しているが、大企業であるが故に、小回りを利かして、ユーザー量に合せて、回線を増加できるのかと言えば、疑問です。
 当サイトの運営側でも、夏前までは、ユーザーの評判が良かったu-mobileを利用してみた。たしかに安定的に高速通信を体験できたが、秋に差し掛かると、急に重くなり、大手キャリアと契約しているiPhoneでテザリングした方が早いといった残念な事態を体験している。SNSが拡がった昨今では、ちょっとしたユーザーの不満やMVNOの不備などは、スグに拡散されてしまう。MVNO各社は早急に回線量とユーザー数のバランスを再確認し、今後の安定的な高品質な高速通信環境を提供できるように、努力する必要があると言える。


◆手続きはショップで

 海外では、この格安SIMはある程度認知と知名度を得ている、国や地域によっては、日本のような大手キャリアは存在せず、MVNOが市場を握って高品質なサービスを提供していることがある。
 では、日本ではなぜ、こんな感じになってしまったのか?
 日本では、昔から大手キャリアがドコモであれば、ドコモショップ、auであれば、auショップと言った具合で、店頭窓口を作っていた。アフターサービスや、サービス業を重視していた結果で決して悪い事では無い。
 しかし、この文化が、MVNOの浸透を遅らせている一因だと言える。MVNOは、安い通信料金で高速通信を提供することが出来る。これは、通信回線をドコモなどの大手通信事業者から借り受けているので不思議に感じるかもしれないが、コストに関する考え方が大手通信事業主と異なる。
 大手は、ドコモショップ、ソフトバンクショップといったように店舗を構えている。ショップの賃貸料金、スタッフの人件費などの経費がかかるが、MVNOはそういった店舗を構えると言った事はほとんど行わず、契約からサービス提供まで、基本的にはオンラインで解決させている。その為、膨大な賃貸料金や人件費がかからず、その費用をユーザーに還元する事で、大手の通信料金以上に安い料金で、ユーザーに提供ができている
 しかし、大多数のユーザー側からすれば、ショップに足を運んで、携帯を購入し、回線の契約も同時に行うといった事に慣れ過ぎてしまったがために、オンラインでの手続き型のMVNOには、どうしても足踏みしてしまうのが現状だ。
 海外などでは、ドコモショップやAUショップのような携帯販売店は存在するが、日本のように、膨大に存在しているわけでは無い。
 MVNOも加入者を増やすために、最近では、楽天やmineo(マイネオ)などは、店舗でのサービス提供を意識して、店舗を開店し始めているが、これは、最終的には、通信料金の値上げにつながる恐れもある。
 このジレンマを無くしていくために、企業努力だけではなく、政治的な支援や、ユーザーの意識の変更など、この問題は一筋縄ではいかないでしょう。


◆サービスの問題

 大手通信事業者にあって、MVNOに無いモノ、これも、契約に関して足踏みしている理由になるでしょう。最近では、即日で電話番号を引き継げるナンバーポータビリティ(MNP)サービスや、留守番電話、転送電話、海外ローミング、SMSサービスなど、ほとんど大手の通信事業者と変わらないオプション設定などができてきているが、決定的なのが2点あると思われます。
 一つが、通話のカケホーダイサービスですね。電話し放題のサービスが無いという事です。通信料金を下げることに終始しているMVNOは電話回線に関しては、特筆すべきサービス提供がありません。
 とは言え、LINEやskypeといった通話料無料のアプリの利用や、電話回線を利用した楽天でんわや、ビッグローブでんわの様な、アプリを利用すれば、通常20円/30秒の通話料が半額の10円/30秒になったり、IP電話と言われる、つまりインターネット電話などを利用すれば、かなり安価になる。
 意外と、カケホーダイの契約をしていても実はそれほど、通話をしていない人が多く、実際にショップなどで明細の内容を確認してもらうと分かりますが、こういったサービスを代用するだけで、かなり通話コストは圧縮できる。
 また、もう1点が、通信回線の使い放題プランの存在です。いくつかのMVNOでは、通信し放題というサービスを提供していますが、月間10GBまでといったように通信し放題なのに、上限があるといった問題があります。無料のWi-Fiスポットを全国展開しているMVNOもありますが、この点を改善できれば、サービスの市場も大きく伸びていく事でしょう。