携帯大手3社への値下げを検討させる総務省会合

携帯大手3社への値下げを検討させる総務省会合

 先週19日の月曜日に行われた安倍首相の一声で始まった総務省の有識者会議「携帯電話の料金その他の提供条件に関するタスクフォース」は様々な波紋を呼んでいます。
 当サイトは、MVNOサービス、格安SIMの未来振興に寄与できればと、広告収入で成り立っているサービスで、格安スマホに主を置いており、携帯大手事業主はいわば、敵とまでは言いませんが、対角線上にいる存在です。
 ですが、今回の議論に関しては、不公平感を感じます。会合を終えて官房長官からの一言も、3社の寡占状態にあり、「似たような料金体系からしか消費者はサービスを受けられない」といったコメントがありました。
 もちろん、ユーザーからすれば、日常的に利用している携帯電話の料金が安くなれば、利用している私にしても、「嬉しい」訳ですが、ちょっと、今回の件に関しては、疑問を感じます。別にドコモやau、ソフトバンクに肩入れしているわけではありません。
 いくつかの観点で疑問に感じる理由を列挙してみます。大きく3点あります。
 1点目、 法律に違反している訳では無いのに、企業に対しての政治介入
 2点目、 本当に景気に寄与するのか?
 3点目、 似たような料金体系は仕方ない
 では、それぞれの議論を書き起こしていきます。


◆ 1点目、法律に違反している訳では無いのに、企業に対しての政治介入

 そもそも、政治が企業にたいして、指導を行うまたは、業界に対して意見を言うのは、ちょっと疑問があります。例えば、刑法、商法など法律違反を行っているとか、以前のコンプガチャ問題や、出会い系の温床になっている可能性があると言われたスマホのSNSアプリといったように社会問題になっているのであれば、問題として考えられるだろう。ところが、今回に関しては、「大手3社の寡占状態に関して」、「料金プランが3社とも似ている」といった所感が出てきた。
 企業の競争であれば、当然競合他社を見ながら、テレビCMやサービスが似てくることは仕方の無い事、利用するユーザー、営業対象となるユーザーは一緒なのですから、普通の話です。犯罪でもなければ、社会問題でもないです。市場に競争の概念が少ないケースに関して、国家が政治介入しているに過ぎないのではないか?社会主義国家であれば、こういったケースはあっても仕方ないと言えるが、日本はいつから、社会主義国家になったのであろうか?


◆2点目、本当に景気に寄与するのか?

 では、今回の議論の焦点とまでは言われていないが、生活者に安い料金で、各社がサービス提供したとしよう。ここには、更に2点の疑問を禁じ得ない。1点目は、値下げを行うという事は、どこかにその価格分のシワ寄せが行くという事だ。そこで働く社員の給与に直接影響し、極端な話、人員整理にまで追い込まれることだってあり得る。いずれにしても、かなりの社員数をかかえる3社にとって、広告を削るか、給与を減らすかといった事になれば、膨大な広告を削られれば、日常的に見ている広告であり、その影響は、広告代理店やテレビ、雑誌などのメディアにも少なからず影響し、景気減退の一因になりかねないのではないか?また、数多くの全国の社員の方の待遇が悪くなれば、それこそ、直接家計に影響してしまいます。
 また、もし、サービスの縮小につながれば、利用しているユーザーにも悪影響を与える可能性があります。
 どんな政策も全員が全員幸せになるような方程式が出てくるとは思っていませんが、こういった事を考慮しているのか?議論をする前に、検討されなかったのか?短絡的ではないのか?疑問を禁じ得ません。


◆3点目、似たような料金体系は仕方ない

 これは、仕方ないですよね。例えば、納税額が大きい、日本の産業を支えている車であったり不動産、鉄道などといったサービスを事例にとれば、車は車種や購入層の所得によって選択肢は異なりますが、同じ比較対象として比べられることの多い、ヴィッツとデミオ、フィットの価格にそれほどの違いがあるのか?オプションの選択に大きな違いがあるのか?また、不動産であっても同様で地域や築年数、間取りなどで、価格の差はあるが、それほどの違いを感じることはありません。鉄道に関しては、参入企業数と、個人が利用する地域で考えれば、そもそも寡占状態と言えるでしょう。
 また、同じユーザーを獲得しようとすれば、結果として同様の料金体系になるのは自然と言えます。時間をかけてPDCAを回して、マーケティングを行っていれば、新しい方程式や急な技術革新が生まれない限り、一定のゴールになっていくのは仕方の無い事と言えます。


 いずれにしても、まだ第1回の結果でしかないので、ゴールの見えない議論で始まっているので、業界の振興を目的に、市場を活性化させるための起爆剤になるとか、明細の明確化、透明性などといった内容であれば、一定の理解を感じるが、一方的な値下げの指示のような政治の一般企業への悪い政治介入の事例にならないことを祈るばかりです。
 他にも議論すべき事項は多々あるかと思います、優先順位も気になるところですね。アベノミクスで大企業の社員の所得を少し上げたが消費が進まなかった事に対するシワ寄せがこの業界に飛んでいったのか?先日の有事法案による支持率を気にした選挙対策として、値下げを指示して支持率を上げたい、国民の目を他にそむけたいといったような小さい話なのか?もう少し、このサイトでも追っていきます。